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大阪高等裁判所 平成5年(行コ)67号 判決 1996年5月24日

京都市上京区河原町荒神口下る上生洲町二三四番地

控訴人

法澤剛雄

右訴訟代理人弁護士

木村靖

玉木昌美

同市同区一条通西洞院東入元真如堂町三五八番地

被控訴人

上京税務署長 宮崎一也

右指定代理人

小野木等

小島治男

松本正信

森将浩

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一申立

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  大津税務署長が控訴人に対し、昭和五三年三月一〇日付けでした控訴人の同四九年分所得税更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件処分」という)を取り消す。

3  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文と同旨

第二当事者の主張

一  請求原因

1  控訴人は、不動産の売買、仲介等を目的とする会社の役員であるが、その昭和四九年分の所得税の確定申告・更正処分等(本件処分)・異議申立て・異議決定・審査請求・裁決の経緯は、別表1記載のとおりである。

2  控訴人の同年分の総所得金額は確定申告のとおり給与所得二一〇万円にすぎないから、それに分離土地等の雑所得三億七六二一万三一六三円を加えたものが総所得金額であるとしてなされた大津税務署長の本件処分は違法である。

よって、控訴人は、大津税務署長から権限の委任を受けた被控訴人に対し、本件処分の取消を求める。

二  請求原因に対する認否

請求原因1の事実は認めるが、2の事実は否認する。

三  抗弁

1  控訴人の昭和四九年分の所得金額は、給与所得二一〇万円に分離土地等の雑所得四億〇九三六万三五一五円を加えたものであるから、この範囲内の所得があるものとしてなされた本件処分にはなんら違法はない。

2  右雑所得の計算根拠は、次のとおりである。

(一) 収入金額 六億五五八三万四〇〇〇円

(1) 控訴人が昭和四九年八月一四日大津市土地開発公社(以下「公社」という)との間で締結した別表2「順号」1ないし25及び30の土地(以下「本件土地」という)を公社に売り渡す旨の売買契約(以下「本件売買契約一」という)によって取得した売買代金

六億三四八八万四〇〇〇円

(2) 控訴人が同年一二月六日丸尾孫寿(以下「丸尾」という)との間で締結した別表2「順号」28(別表3「番号」2土地-以下「28土地」という)の土地を丸尾に売り渡す旨の売買契約(以下「本件売買契約二」という)によって取得した売買代金

二〇九五万円

(3) 以上合計 六億五五八三万四〇〇〇円

(二) 取得価額 二億四五三九万〇九八五円

控訴人は、本件土地を別表8記載の売主から同表「売買契約」欄記載の金額で買い受けた上、同「追加金等」欄記載の金額(以上、合計二億三四〇〇万八九八五円)を支払い、また、28土地を代金一一三八万二〇〇〇円で買い受けていたものであるから、公社に売り渡した土地の取得価額の総計は二億四五三九万〇九八五円である。

(三) 必要経費 一〇七万九五〇〇円

本件土地の売主一六名を台湾旅行に招待した費用

(四) 所得金額 四億〇九三六万三五一五円

(一)収入金額から(二)取得価額及び(三)必要経費を控除したもの

3(一)  控訴人は、昭和四〇年一一月五日に宅地建物取引業の免許を受け、同四六年頃からは福富住宅又は近畿ハウジングの商号で不動産取引業を営んでいたが、同四八年二月一日に宅地建物取引業を廃止して廃業届を提出した。

(二)  本件土地等はすべて、控訴人がその事業の継続中に転売して利益を得る目的で取得したもの(たな卸資産に準ずる資産)であり、これを事業の廃止後に譲渡したのであるから、これによって取得した所得は事業所得には当たらず、また、当初の目的どおり転売したものであって、臨時的・偶発的に譲渡したものではないから譲渡所得にも当たらず、結局、雑所得に該当するというほかはない。また、租税特別措置法三三条の適用もないというべきである。

四  抗弁に対する認否

1  抗弁1のうち、控訴人の昭和四九年分の給与所得の金額が二一〇万円であったことは認めるが、その他は否認する。

2  同2(一)(1)の事実のうち、控訴人が昭和四九年八月一四日公社に対し、別表2の順号10ないし13、25、80の六筆の土地(以下「六筆の土地」という)を代金合計二億〇〇八四万九七六〇円で売り渡したこと及び(2)の事実は認めるが、その他は否認する。その他の物件はいずれも、控訴人が各地主の代理人として公社に売り渡したものであるから、その代金は控訴人の収入ではなく、各地主の収入である。のみならず、右土地については、昭和五〇年二月二〇日に「変更契約」の名の下に改めて売買契約が締結されたのであるから、それによる所得は昭和五〇年分の所得であって、昭和四九年分の所得ではない。

3  同2(二)の事実は否認する。控訴人は、株式会社興人の代理人として別表2「順号」1ないし27の土地を買収したものであるから、その買主は興人である。その後、買収地が中学校の移転地として予定されることになったことから、興人と土地所有者との間で右売買契約を合意解除し、改めて各土地所有者から前記のとおり公社へこれを売り渡すこととなったものであるが、その際、土地所有者の中に合意解除に反対する者があったため、その分は控訴人において興人への返還額と同額の代金額で買い取った上公社へ売り渡すこととした。それが本件六筆の土地である。したがって、その分の取得価額は、当初の買収価額ではなくて興人への売渡価額(合意解除による返還額)というべきである。

4  同3(一)の事実は認めるが、(二)の事実は否認する。当初本件土地等を買収したのが控訴人でなく興人であったことは前記のとおりであり、また、本件六筆の土地の取得の事情は前記のとおりであって、転売を目的としたものではなく、学校用地の確保に尽力していた公社に協力するため、やむなく元の所有者から取得して公社に譲渡したものであるから、租税特別措置法三三条の適用により、譲渡がなかった(又は政令で定める部分についての譲渡があった)ものとされるべきである。

第三証拠

原審及び当審記録中の証拠目録記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  請求原因1の事実は当事者間に争いがないので、以下、抗弁について判断することとする。

1  抗弁1の事実のうち、控訴人の昭和四九年分の給与所得の金額が二一〇万円であったこと、同2(一)(1)の事業のうち控訴人が六筆の土地を公社に売り渡したこと及び(2)の事実は当事者間に争いがない。

2  そこで、その他の物件についても、控訴人がこれを公社に売り渡したものと認められるかどうかについて検討する。

(一)  甲一の一ないし三、七の四一、三四の一ないし四、三五ないし三八、三九の一、二、四〇ないし四四、四五の一、二、四六ないし五〇、五二の一、甲一三八の一、二、乙二ないし四、六、五四の一ないし九、五五の一ないし三一、五八、五九、六三、七一、七五、証人宮崎朋郎、同小谷嘉代子、同高村圭一、控訴人(第一回)によれば、次の事実が認められる。

(1) 興人は、昭和四五年頃から大津市瀬田町において大規模な宅地開発を行うため、地元の不動産取引業者を通じて土地の買収をするようになったが、買収の方法としては、業者の仲介によって直接地主と売買契約を締結したり、直接自社の名前で契約を締結するのは都合が悪いときなどには、先ず業者が自己の名で買い取った上、さらに興人が業者からこれを買い受けたりする遣り方をとっていた。

(2) 控訴人は、昭和四六年以降興人から用地の買収交渉を依頼され、これを実行してきたが、買収に成功した土地三八筆についてはすべて、まず控訴人が地主からこれを買い受けた上、うち一四筆を同年八月二〇日に興人の子会社である西日本不動産株式会社に、うち二四筆を昭和四七年一月二四日に興人にそれぞれ転売する旨を記載した契約書が作成されている。

(3) 控訴人は、地主との買収交渉にあたり、最終的には興人が買主となって代金を支払うことになる旨を説明してはいたが、本件土地等の買収に関して地主との間で作成した売買契約書にも、買主として控訴人(法澤剛雄、近畿ハウジング法澤剛雄)ないし控訴人が承諾を得て名義を借りた夏原ふみよの名が表示され、興人が買主として表示されることはなかった。また、興人との間では昭和四七年七月一五日付で控訴人(近畿ハウジング法澤剛雄)を売主、興人を買主として別表5「順号」28土地と「次契約分」欄1記載の土地を含む二七筆の土地を「売買代金」欄記載の代金(合計二億〇四六一万円)で売り渡す(第一次売買契約)旨を記載した売買契約書、同年一〇月一一日付で控訴人(近畿ハウジング法澤剛雄)を売主、興人を買主として同表「次契約分」欄2記載の土地を含む三三筆の土地を「売買代金」欄記載の代金(合計三億一一〇六万六〇〇〇円)で売り渡す(第二次売買契約)旨を記載した売買契約書、同年一二月二五日付で控訴人(株式会社近畿ハウジング名義を借用)を売主、興人を買主として同表「次契約分」欄3記載の土地を含む七筆の土地を「売買代金」欄記載の代金(合計五八一九万八〇〇〇円)で売り渡す(第三次売買契約)旨を記載した売買契約書がそれぞれ作成された。

(4) 買収地については、地主から直接興人に所有権移転請求権仮登記が経由され、また、代金が最終的にどの地主に支払われることになるのかの明細についても興人の認識するところではあったが、その支払いはすべて興人から控訴人に対してなされ、その領収証の作成名義人も、控訴人、近畿ハウジング法澤剛雄、株式会社近畿ハウジング、ハウス工業株式会社となっており、地主の代理人として受領する趣旨の記載はない。

(二)  甲一の一ないし三、四の一ないし三、七の一、五、七、一四ないし一七、一〇六、乙五ないし九、一一ないし二〇の各一、二、四七ないし四九、五四の一ないし九、六三、証人木戸綱幸、同高村圭一、同宮崎朋郎によれば、次の事実が認められる。

(1) 大津市(教育委員会)では、昭和四八年六月頃、本件土地の一部を瀬田中学校の移転先とすることとなったことから、公社に対し昭和四九年三月末までにこれを取得するよう要請したが、対象土地の大部分には前記のとおり興人の所有権移転請求権仮登記が経由されていたため、公社としては興人がこれを所有するものと判断し、昭和四九年七月三一日付で興人に対し、対象土地(別表2「順号」1ないし13、18、19、24、25、30土地-以下「本件対象土地」という)を公社が取得するのに協力するように依頼した。

(2) そこで、興人においてもこれに応じることとし、同年八月一〇日付で公社に対し、本件対象土地については売主である控訴人との間で売買契約を合意解除するので、その後は控訴人と交渉して処理されたい旨を回答し、控訴人もまた公社に対し、契約解除後は自己が本件対象土地の所有者であるから、以後買収については控訴人と交渉するようにとの申入れをした。

(3) その結果、昭和四九年八月三〇日に別表2(1)「興人との解除物件」欄記載の二九筆の土地について、興人との間で売買契約の合意解除がなされたが、その際作成された売買契約解除証書には、解除合意の当事者として控訴人・株式会社近畿ハウジング(売主)と興人(買主)との名が記載され、契約解除に基づいて興人に返還すべきこととなった受領ずみの手付金及び売買代金の内金(総額で一億九八一五万八〇〇〇円)も、控訴人が同年八月三〇日に興人に支払った。

(三)  甲五、七の1ないし四一、九の一ないし八の各一ないし三、九の九の一ないし五、九の一〇、一一の各一ないし三、九の一二、一三の各一ないし五、一〇の一ないし三、一四、一五の各一、乙五、一一ないし二〇の各一、二、二一ないし二三、二四ないし二六の各一、二、二七、二八ないし三一の各一、二、四七ないし四九、五〇の一、二、五一の一ないし三、五二、五三、証人木戸綱幸、控訴人(第一回)によれば、次の事実が認められる。

(1) 以上のような経過から、公社はその後、控訴人との間で本件対象土地及び瀬田中学校新築工事に必要な土地の買収交渉を進めるようになったが、その結果、本件土地(25土地を含むことは後記認定のとおり)を代金合計六億三四八八万四〇〇〇円で買い受ける旨の合意が成立するにいたり、公社と控訴人との間で売買契約証書を作成する段取りとなった。

(2) ところが、その時になって、税負担の軽減を慮った控訴人の方から公社に対し、別表2「売買契約書上の売主」欄の者を売主とする売買契約書を作成してもらいたいと申し出てきたので、公社としても、これに応じなければ用地の買収が遅れるものと危惧するとともに、本件土地について控訴人がなんらの登記名義も持っていないことに配慮し、各所有名義人の委任状と印鑑証明書とをまとめて提出させることを条件にこれに応じることとした。

(3) そこで控訴人は、買収した同土地の所有権移転登記手続に必要であるからといって、右土地の所有名義人である元地主から委任状と印鑑証明書とを徴求して公社に交付したが、控訴人が公社との間で右のような交渉をしていたことについては、右地主らにも知らされないままであった。

(4) かくして、別表2「順号」1ないし3、5ないし24、30土地については昭和四九年八月一四日付で、同4土地については同月一六日付で売買契約書が作成されるにいたったが、同契約書上には、控訴人の要請どおり、売主として前記の者(元地主)、その代理人として控訴人の名が記載されている。

(5) その後公社は、右土地(25、30土地を除く)について公社名義に所有権移転登記を経由するとともに、その代金として、昭和四九年八月三〇日に三億円、同年九月二七日に三億円、同五〇年二月三日に三四八八万四〇〇〇円を控訴人に支払ったが、その領収書は控訴人名義で作成されており、元地主の代理人としてこれを受領した旨の記載はなんら存在しない。

(四)  以上の認定事実を総合すれば、本件六筆の土地以外の物件も控訴人がみずから売主となって公社にこれを売り渡したものであって、元地主の代理人として売り渡したものではないと認めるのが相当であり、その代金は六億三四八八万四〇〇〇円(28土地をあわせると六億五五八三万四〇〇〇円)ということになる。

もっとも、甲一〇八(控訴人の報告書)、乙六五(控訴人に対する質問てん末書)、控訴人本人尋問の結果(第一、二回)中には、控訴人は興人の代理人として地主から本件各土地を買収し、また、地主の代理人としてこれを公社に売り渡した旨の供述部分があり、甲五(公社職員の陳述書)、六の一ないし四、九八(瀬田農協職員の陳述書)、九九、一〇一ないし一〇五(いずれも元地主らの陳述書)、乙六六(元地主らの供述記載)や証人山崎昇、同中谷重助、同森口周作、同中谷寿美子、同井上冨江、同井上宗次の証言中にもこれに沿うような供述記載が存在するけれども、これらはいずれも昭和五五年の六、七月及び平成三年当時の供述であって、しかもそれ以前の昭和五三年になされた元地主ら関係者の供述(乙四〇、四三、四六、六七、七〇、七三)とも著しく内容が異なるものであり、右認定の事実経過とも整合しないものであるから、これを信用すべきものと認めるわけにはいかない。

さらに、別表2の順号1ないし3の土地について、これが公社に売り渡された後、学校用地の区域が変更され、その区域から外れることになったことから、租税特別措置法三三条の適用が受けられなくなり、修正申告をして納税しなければならないことになったこと、そこで、その修正申告書が税務署に実際に提出されたが、その申告書は右土地の所有者であった中谷礼太郎、高野惣平及び坂口佐右衛門の名義で作成されたものであったこと、しかし、その税は、公社との交渉・協議の結果、公社が負担することになったことは、いずれも被控訴人の明らかに争わないところであるが、右の手続きや交渉・協議が控訴人の関与なしに右三名の所有者のみによってなされたことを認めるべき証拠はなんら存在せず、前記認定の事実経過からすれば、むしろ控訴人主導の下になされたものと推認するのが相当であるから、この事実もまた、前記認定判断を動かすに足るものということはできず、他に右認定の妨げとなるような証拠は見当たらない。

3  ところで、控訴人と公社との間の本件土地の売買契約について、控訴人からの要請により別表2の「売買契約書上の売主」欄に記載の元地主を売主と表示した売買契約書が作成されたことは前記認定のとおりであるところ、甲九の六ないし八の各四、九の九の六、一四の二、三によれば、その後、昭和五〇年二月二〇日付で、別表4記載の物件につき同表<2>欄記載のように契約内容を変更する旨の「変更契約書」と題する書面が作成されていることが認められるとともに、甲一四の一によれば、昭和四九年八月一四日付の控訴人と公社との間の売買契約書には25土地は目的土地として記載されておらず、同土地については売買契約書は作成されていなかったことが認められる。

これらの事実からすれば、一見、25土地については昭和四九年八月には売買契約は締結されておらず、右「変更契約」によって初めて売り渡されたものてあるかのようであるけれども、右土地についてはすでに昭和四九年一二月二八日の時点で公社に対し所有権移転請求権仮登記が経由されている(この点は当事者間に争いがない)ことから考えると、同土地についても昭和四九年八月に売買契約が締結されており、ただその契約書の作成漏れがあったにすぎない公算が大であるとみるのが相当である。

さらに、14ないし16土地については、右「変更契約書」上、売買契約を解約する旨記載されており、昭和四九年八月一四日付の売買契約の目的物からこれを除外したもののようにみえないわけではないけれども、仮りにそのような事実があったとしても、売却土地のごく一部であるこれらの土地を目的物件から除外したことにより売買契約がその同一性を失い、「変更契約」と称する全く別個の売買契約が締結されることになったものとはとうてい認めることはできないというべきである。のみならず、甲一一七ないし一二〇によれば、14ないし16の土地は、現在にいたるまで公社の所有名義のままであって、売主側へ名義が戻されていないことが認められるのであって、現実にこれらの土地について売買契約を合意解除し、これを売買の目的物から除外したものか甚だ疑わしいといわざるをえない。もっとも、この点について控訴人は、所有名義がそのままとなっているのは公社所有の大津市瀬田大江町大江団地内の宅地と交換したからであると主張し、甲一一七によれば、控訴人と公社との間で、昭和五〇年二月二〇日付で解約した14ないし16の土地と公社の「大津市瀬田大江町大江団地の内宅地一二二六平方メートル」とを等価交換する旨を記載した昭和五〇年三月七日付の「覚書」が作成されていることが認められるけれども、交換の目的となる土地を「大江団地の内宅地一二二六平方メートル」とするのみで具体的にこれを特定していない点において甚だ不自然であるばかりでなく、甲一二八の一、二によれば、右「覚書」に基づく契約として、控訴人と公社との間で、14ないし16の土地と公社の大津市大江五丁目字東海道八二五番四二、四三、四四、三三及び同所字管池七一〇番一〇の五筆の宅地(ただし、その面積の合計は一二三五・五七平方メートルであって、「覚書」に記載の面積と異なっている)とを等価交換する旨の昭和五二年九月六日付の「交換契約書」が作成されているところ、このうち八二五番四二については昭和五三年三月一八日付で公社から小西庄次への真正な登記回復を原因とする所有権移転登記が、八二五番三三については昭和五三年四月一四日付で公社から井上芳太郎への真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記が、さらに八二五番四三については昭和五三年一月一九日付で公社から日成住宅株式会社への同年一月一三日付売買を原因とする所有権移転登記がそれぞれ経由されていることが認められるのであって、これらの事実から考えると、真実14ないし16の土地について売買契約が合意解除され、これを売買の目的物件から除外したものかどうかは、前記のとおりきわめて疑わしいというよりほかはない。

以上の難点のほか、「変更契約」によっても売買代金の総額になんら変更がなかったこと(この点についても当事者間に争いはない)などをも考慮すると、右「変更契約」によって新たな売買契約が締結されたものとはとうてい認めることができず、この「変更契約」は、25土地の売買契約書の作成漏れを取り繕うための書類上の処理にすぎなかったものと推認するのが相当というべきである。

4  控弁2(二)(取得価額)及び(三)必要経費については、原判決三〇頁七行目冒頭から三八頁九行目末尾までのとおりであるからこれを引用する。

ただし三〇頁八行目の「二億五三三三万円七五〇五円」を「二億三四〇〇万八九八五円」と訂正し、三七頁末尾の次に、次のとおり加える。

「(一七)番号30の土地(石元喜義関係)証拠(乙七一)によれば、取得価額は、原告が昭和四九年一二月一日、この土地を買い受けた代金と昭和五〇年九月頃に追加金として支払った六〇万円の合計額と認められる。」

5  本件土地の売却譲渡による控訴人の所得が雑所得に当たること、この譲渡について措置法三三条の適用がないこと、二重課税の違法のないことは原判決説示のとおり(同二八頁九行目から二九頁一〇行目末尾まで)であるからこれを引用する。

そうすると、控訴人の昭和四九年分の分離土地等に係る雑所得の金額は、四億二〇七四万五五一五円となるので、控訴人の給与所得の額が二一〇万円、分離土地等の雑所得の額が三億七六二一万三一六三円であることを前提としてなされた本件処分にはなんら違法は存在しないというべきである。

二  結論

以上の次第で、控訴人の本訴請求は失当でありこれを棄却した原判決は相当であって、本件控訴は理由がないのでこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 藤原弘道 裁判官辰巳和男は退職につき、裁判官楠本新は填補のにつき、それぞれ署名捺印することができない。裁判長裁判官 藤原弘道)

別表1

課税処分の経過

<省略>

別表2

土地物件明細表

(1) 興人との解除物件

<省略>

(2) 別物件

<省略>

別表3

取得価額の明細

<省略>

別表4

本件変更契約の内容一覧表

<省略>

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